はもすきが好物です

本との間で対話が成立するようなブログを目指したい

英語授業の「幹」をつくる本 上巻

 できれば毎日更新したいので、酔っぱらいなうですけど、新しく投稿します。本日は昨日に引き続き、英語教育関連で、北原延晃(2010)『英語授業の「幹」をつくる本:上巻』ベネッセコーポレーションです。その界隈では紹介は無用と思われる北原先生の著書ですが、はずかしながら、今回はじめて読みました。

 

英語授業の「幹」をつくる本 (上巻)

英語授業の「幹」をつくる本 (上巻)

 

上巻の見通し

 本書は上下巻+テスト編とさらに授業映像を収録した映像編からなるシリーズである。映像編は割高なので、とりあえず上下巻とテスト編を購入してみました。

 上巻では、「北原メソッド」について数字に裏打ちされた効果を紹介しながら、発音指導・辞書指導・語彙指導・音読指導・リスニング指導・スピーキング指導について述べられている。一貫していることは、大量のcomprehensive inputを、日本語を介さずに与えるということである(これは必ずしも日本語による「解説」を否定しない)。乳幼児が言語を学ぶ過程を参考にしつつ――すなわち母語習得――日本での英語教育を行うというものである。

 

発音指導と語彙指導

 上巻で特に感銘を受けた点は、「発音指導」と「語彙指導」である。昨今フォニックスを活用した発音指導は有力とされる指導法ではあるが、著者はフォニックスありきで考えることは問題があるとしてる。それは、フォニックスが「アメリカで発話はできるが読み書きができない人たちを対象に作られたもの」(p.55)であり、「指導対象となる人はすでに音声としての語彙が相当数ある」(p.55)ことを想定しているからである。ゆえに、語彙がそれほど蓄積されていない入門期には、フォニックスはそれほど意味を成さないとされている。そのなかで、教科書の音読を活用した発音指導、さらにそこから展開される2学期以降のフォニックスの導入について紹介されている。

 

 また、辞書指導を含む語彙指導についても学ぶべき点は多い。まず、語彙指導が適切には行われていない点があると同時に、授業時数との関連から辞書指導が疎かにされている現実が紹介されている。すなわち、昨今の学習者たちは、自律的*1に語彙を増やしていく機会や手法に乏しいというわけである。

 辞書指導のメソッドが多数紹介されているが、それらが目指すところは教師や授業がなくとも、自律的に外国語を学習していく力を育てるということにあると私には思われる。

 

感じたこと

 本書は具体的な実践例を、数字や効果を具体的に用いてい示しており、非常に学ぶべき点は多い。一見したところでは、いわゆるスーパーティーチャーによる並外れた実践であると感じられるかもしれないが、すくなくとも外国語教育のプロとして授業行うにあたっては、意識的に取り入れていかなければならない点であると思われる。そして、それらはそのまま自分の実践への強烈な反省になるわけではあるが...

 正直言って、まだまだ消化しきれていない部分が多いが、まずはテスト編までを一通り通読して、あらためて自らを振り返ってみたい。

*1:「自立」という表現が本書では用いられているが、そもそも個人的にすなわちたったひとりで学ぶことはできないという点を考慮に入れ、私は自律的という表現を用いたい